04/08(月) は「IBM TEC-J Presents 「知性を問う」勉強会第二弾」に参加してきました。
廊下が白と直線を基調としたデザインでIBMっぽい感じですね。 ちなみにWi-Fiは提供されていませんでしたので、自前でテザリング等で接続する必要があります。 (Call for Codeのハンズオンで来たときは提供されていたので、この辺りはイベントによって変わるということなのだと思います)
目次
IBM TEC-Jとは
以下のページに詳しく書かれていますので、参照してください。
上記ページの冒頭に書かれている内容を引用すると
米国のIBM技術アカデミーと連携しながら活動しているIBM TEC-J (Technical Expert Council – Japan)は、IBM技術者の自由な技術コミュニティとして多様な研究テーマを提案し、ボランティアベースの研究チームを編成している。
ということで、以下の9カテゴリに分類された技術研究テーマについて、それぞれのカテゴリ毎にリーダーを立てて活動をされているようです。
- Profession Activity
- AI Cognitive Analytics
- Cognitive Ops
- Cognitive UX
- Architecture and Solution
- System Infrastructure
- Software Engineering
- Socio Technical Problems
- Work Style
この IBM TEC-J チームが運営するのがこの勉強会です。
1回目は実施されたのを知らなかったのですが、以下の勉強会のようです。
何故参加したか
テーマに興味があって参加しました。
内容
講義形式で2本のセッション、最後に討論という形式で進められました。
18:00から勉強会開始と他の勉強会に比べて早いのと、雨が時々激しく降る天候にもかかわらず、50人以上の人が参加していました。
以下の内容は、セッション中にメモした内容を載せているので、不正確だったり不足している情報があるかと思います。 その点は予めご了承ください。
資料に詳しく書かれているので、詳細は資料を見ていただければと思います。
「意味とはなにか」
マルレク 丸山不二夫 さん
人工知能にとって自然言語の意味を理解するということは、重要な課題です。
自然言語処理技術と意味理解の試み、構成的意味理解のアプローチについてご講演をいただきます。
深層学習を用いた機械翻訳や画像の書き起こし、IBM Watsonの文法解釈など、語と文や文法が現実の世界をどう表現し、意味を解釈できるのか探求します。
個人メモ:
研究の方法と立場を紹介しながらアプローチを紹介
- 言語理論に関しては計算主義
- 意味の理論としては形式性
- 構成性
Frageの理論
複雑な式の意味は、その部分の意味とそれらを組み合わせるための規則によって決まります。 * --- Gottlob Frege
言語・意味への関心を振り返る
言語・意味への関心
- 言語・意味への関心は歴史的に形成されたものである。 それは基本的には近代以降のものだ。
Lingua Franca
- 言語と言語が交わるとき、言語に関する関心が生まれる。 意味についても異なる言語間の翻訳が意味についての新しい洞察を可能にする
「形式」の重要性の認識
- 認識論と科学における「形式」概念の重要性を表すものとしてこれらの議論を考えている
Penrose“Shadows of the Mind”
ルネッサンス 理性概念
チョムスキーは、ある時期まで自己の言語理論を「デカルト派言語学」と特徴づけていた。
[;w500]
自然科学の方法をめぐって
ボルツマン チューリング の 共通点
- 名前についたマシンを持っている
- 自殺している
原子論者 ボルツマン
異端の学説 原子論
Scott Aaronson は自書 “Quantum Computing Since Democritus” の表紙をデモクリトスで飾った。
ボルツマンの悲劇
- 19世紀の物理学ても、「原子論」は「異端」の学説だった。 ボルツマンの業績は、彼の生前には正当に評価されなかった。 特に、当時の物理学会で大きな発言力を持っていたマッハとそ の取り巻きは、酬釧ニボルツマンの「原子論」を攻撃した。 ボル ツマンは、追い詰められ、次第に精神を病んでゆく。
- アインシュタインの画期的な論文「熱の分子論から要求される 静止液体中の懸濁粒子の運動について」が出たのは、1905 年5月である。 ボルツマンも、この20代の若者の論文を読んだ と思うのだが。
- 翌1906年、彼は、自ら命を絶つ。
“Can machines think?”
機械論者・計算主義者としてのチューリング
私は「機械は考えられるのか?」という質問を検討することを提案する。
元の質問、「機械は考えられますか?」 私は議論に値するにはあまりにも無意味すぎると思います。
それにもかかわらず、私は今世紀の終わりに言葉の使用と一般的な教育された意見が矛盾することを期待することなく機械の思考を話すことができるようになるほど変化したと信じています。
- アラン・チューリング
チューリング 異端としての「知的機械」論
シャノン 情報理論の登場 1948年
形式的言語の形式的特徴づけ
Chomsky 1956年
計算主義とはなにか?
人工知能論における「計算主義」とは、人間の「知能」の本質を「計算」として抽象しようとするもの。
計算主義の含意
人間の「知能」の本質を「計算」として抽象することで、その抽 象の限りでは、「機械」と「人間」は等値されうる。 だから、この 抽象のもとでは、機械ができることは人間にもてきることになり、 人間がてきることは機械にもできることになる。 特に、後者の 「人間ができることは機械にもできる」という主張は、人工知能 技術の可能性を考える上では、とても強い主張になる。 人工知能の可能性を考える上では、「我々自身を見よ!」という以上 の強いメッセージを、僕は、思いつかない。
現代の言語学
Biolinguistic
Minimalist Program
Lambek Pregroup Grammar
言語への言語学からのアプローチ
Chomsky “Syntactic Structures” 1957年
- 作者: Noam Chomsky
- 出版社/メーカー: Lightning Source Inc
- 発売日: 2015/03/27
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- Chomskyの立場(1) Biolinguistic
- Chomskyの立場(2) Minimalist Program
Biolinguisticとはなにか?
- 言語能力に関する遺伝子の発見 Simon Fisher 2001年
言語能力に関する遺伝子 FOXP2
ゲーリングによる目の遺伝子 Pax-6の発見
脳研究 EU Human Brain Project
Henry Markram
- “I wanted to model the brain because we didn’t understand it.”
- “The best way to figure out how something works is to try to build it from scratch.”
- in vivo
- in vitro
- in silico
Minimalist Program の言語像 Mergeとはなにか?
The Minimalist Program (The MIT Press)
- 作者: Noam Chomsky
- 出版社/メーカー: The MIT Press
- 発売日: 2014/12/19
- メディア: ペーパーバック
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普遍文法をボトムアップで構成する
“Approaching UG from Below” Noam Chomsky 2007 http://goo.gl/V7lrsG
Mergeとはなにか?
“The Science of Language: Interviews with James McGilvray” から https://goo.gl/lbAO7n
Minimalist Program と Pregroup Grammar
PreGroup Grammar
From word to sentence: "a computational algebraic approach to grammar" Joachim Lambek 2008年 http://www.math.mcgill.ca/barr/lambek/pdffiles/2008lambek.pdf
“a computational algebraic approach to grammar” 「計算主義」
ただ、それはぶんの構成性の理論であって、意味の構成性の理論ではない。我々はもう少し先に進まなければならない。
普段2時間で喋る内容を45分でやったので途中で終わった。
「知性のアーキテクチャ」
KatsushiYamashita さん
タコの心身問題 (Other Minds https://amzn.to/2NDxGC7 ) シドニー生まれの科学哲学者ピーター・ゴドフリー=スミスはヒトとは全く異なる進化経路を辿ったタコの「心」を身体に分散した神経組織による分散処理だと捉える。 それは粘菌やシロアリ、ミツバチなどの群体の驚くべき知性と同じものかもしれない。 一方で、現れる存在 (Being There https://amzn.to/2Tg7ROo) が主張するように、どれだけたくさんの知識をため込んだ論理機械も自己の認識と環境構造がなければ知的な思索を持ち得ない。 人の中央集権的な脳は知性を宿しているといえるのか?
個人メモ:
「心」というシステムは脳よりずっと広い
- ブレインアップロード
- 人間と同じにはならないけど、新しいデジタルな人格ができるのではないか?
タコの心身問題
- 作者: ピーター・ゴドフリー=スミス,夏目大
- 出版社/メーカー: みすず書房
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現れる存在
- 作者: アンディ・クラーク,池上高志,森本元太郎
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2012/11/09
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ファイルキャビネットと論理機械
- 欠けているもの
- 主体、つまり自分
主体的体験
わたしは不思議の環
- 作者: ダグラス・ホフスタッター,片桐恭弘,寺西のぶ子
- 出版社/メーカー: 白揚社
- 発売日: 2018/07/24
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不完全なプログラム
自己とはなにか?
- 内的には言葉を使っている
言語はすべての知性を言い表せない
- 時間的発展を止めてしまう
知性の二元論を否定する
知性は時間的空間的に拡張されたプロセス
Alan Watts
過去と未来は幻想であり現在の中にある
- エゴは外界を探知する問題探索機だ
- エゴを認識したことを覚えてはいない
進化電子工学
- FPGAを使って音階を聞き分けるプログラムを遺伝的アルゴリズムで進化させる
- 37ゲートで音階を聞き分ける
- 5ゲートはどこにもつながっていない(けど必要)
- 生成されたコードは他のFPGAでは動かない(環境依存性が有る)
知性を構成する要素
- 言語・中小と近く・具象の中間領域
- 中間領域を要素とする認知の分散処理
- 単純な指標とブロードキャストによる軍制御理論
- 分散処理を指数級数的に進化させる遺伝的アルゴリズム
- 身体性と同義なデジタル空間の環境資源とそれとの作用・反作用
- 時間と空間の獲得
- 作者: ロバート A ハインライン,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/25
- メディア: Kindle版
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Samantha
- 発売日: 2014/06/23
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- デジタル空間のエージェントに人間が恋に落ちる
- デジタル空間の別のエージェントと会話することで人間界との関わりをやめてしまう
「知性を問う 討論会」
SIGMAXYZ 柴沼俊一 さん
IBMリサーチ 渡辺日出雄 さん
マルレク 丸山不二夫 さん
KatsushiYamashita さん
二つの講演者とSIGMAXYZ柴沼俊一、IBMリサーチ渡辺日出雄を交え「知性の身体性」について、その人工知能の機械的実現、社会や環境構造などについて会場を交えて議論します。
個人メモ:
柴沼さん
- 企業経営の規律型組織と自律型組織 タコの話を聞いて納得
- 人間に自由な意志はあるのか? どうやって人を動かしていくか?A/Bテストを社会全体に当てはめて、インフルエンサー、ゲートを設定することはマーケティングの手法として確立されるのではないか?
- 創発 自由意志ではない 社会は残酷で思ったとおりには全然動かない 創発的に動かしている
丸山さん
- 知性 神の知性・全知全能の知性として何を返すことができるか?
- 科学が何を認識できるか?
- 何をどういう立場でアプローチできるかが関心
渡辺さん
- 知性の定義はたくさんある
- タコの心身問題 タコには知性が有ると思うのはなぜか?
- ランダムに反応をしているのではないような頭の中で考えたような環境に応じて反応が変わるようなもの
- コミュニケーションの手段として存在する
- 昔は翻訳のルールを書いていたが今はDLで。
- 人間は文だけではコミュニケーションをしていない
- 発話のセンテンスを取り込めていない
- I saw a girl from telescope.
- コンテキストによって意味解釈が変わる。
山下さん
- 限定合理性の中で無限の意味空間的に広いものを扱う
- LSTMで限定的にはとき始めている
- 人間が総体として持っている知性
- 海は高いストレスにさらされている
柴沼さん
- 平和なときは個の自立をエンジョイできるけど危機的状況になると種の保存の法則に変わる
丸山さん * 正しいものだけが生き残る * 個人が持っているものではない * 人間の累積的な知識 * 知性とか科学とはなにか? * 科学全体の達成はみんなのものになる * 自分たちのものは? * 集団的な知のあり方は大事
会場から
名古屋のインフラエンジニアさん
- 人類が持っている知性と知識はどうなるのか?
丸山さん
- 知性と知識は違う
- 知識はどんどんためていける
- 知性と知識はカテゴライズされるべき
- 万人が持っているという理性
- 人類の知は確実に存在する たとえば技術
- それを担う人間もいて成り立つので知性
会場から
- 知識は何かによってエンコードされているものを知識
- 知性 何らかの行動を見て知性を持っていると判断する
会場から
吉岡さん
- チョムスキーの話
- 言語学者が言う文法は人間が生来的に持っているものなのか?後付で体得するものなのか?
- 昔は文法を一所懸命やって翻訳に適用したけどうまく行かなかった
- 今は統計的なやり方で結構上手く行っているのをどう思うか?
丸山さん
- それは素人考え
- 今はそう見えるかもしれないが、チョムスキーの言う普遍文法はベース的なもので、そこから学習をする
- DLの限界は見えている
渡辺さん
会場から
IBMチンさん
- ネットワークは自律的なシステム
- ネットワーク中立論
- 外部の知性から刺激を受けながら成長させることができる
- ネットワークのトラブルを検知するにはどうしたらいいか
会場から (お名前を聞きそびれました)
- 答えがわかっているなら中央制御がいい
- インターネットの問題は競争がないこと
- 壊れたらどうにもならない
- ネットワークの中立性の難しいところ
- 等分するのか
- リソースによるのか
- ニーズによるのか
- 中央制御には反対
山下さん
- Power Hop Behaver
- 中央制御がうまくいかないのはIBM自身が証明
会場から
山本さん
- 人間が知性を獲得したのは最近のこと
- 伝えていかないといけないし蓄積していかないといけない
丸山さん
- 言語の役割は重要
- 最初は音だったので記憶にしか残らない
- 言葉によって蓄積が可能になった
- 言語が情報として定着したことが重要
- ただ、最近の若者は文字離れ
- しゃべる、聞くが基本だから元の世界に戻っている麺がある
- コンピュータ
- 発話は音を生成するしかない
会場から
櫻井さん
- 粘菌 巡回セールスマンと同じ動きをしている
- 単細胞がこんなことをできるのに量子コンピューターはまだできていない
丸山さん
- 粘菌は試行錯誤の積み重ねでやっているだけ
- あるところから爆発的に複雑になるので、それも粘菌が解決できるわけではない
- アナログコンピューターは不思議な問題を解ける
- アルゴリズムは色々あるので別の解があり得る
会場から
櫻井さん
- サーモスタットに意思が宿る
- コンピューターを進化させると知性が宿るという話があったが、そういうものにも意識が宿ることになるのか
山下さん
- 意識の定義の問題
- コンピュータが持つ知識は人間とはぜんぜん違うもの
- 人間が思っている人間と同じような意識が宿るわけではない
- 身体性 タコは分散処理している
- 2年しか生きないので主として伝達を目的としていない
- 人間はそれとは違う
- 処理形態によって変わるので、人間とは違うものになる
渡辺さん
- 統合情報理論
- 意識を考えるヒントが有る
- 多くの場合を表現できる
- 統合できる
- そういうものを意識と考える
会場から
コベルコのかた
- シンギュラリティについてはどう考えているか?
山下さん
- 処理能力はとっくの昔に人間を超えている
- 意識があるかはまた別の問題
丸山さん
- 機械より人間が愚かになることはあると思う
柴沼さん
- 人間の特を積んでいくことで人間の知性はのこっていくことになるのかもしれない
渡辺さん
- 人間の感じる恐怖感
- 人間のような意識や意図を表現できるようになれば変わるかもしれないけど、いつ起こる、みたいな話はナンセンス
山下さん
- たまには役に立つこともやる
- 普段は触れたり考えたりすることもやっていくのでよろしく
まとめ
とても沢山の情報を得ることができ、濃密な2時間半でした。 ただ、先週のAIの勉強会のときにも感じたのですが、自分はまだまだ勉強が足りないなというのが実感です。 おそらく今回の内容も基本的な理論や考え方について理解していれば、もっと深く知ることができたし質問もできたと思うのですが、残念ながらそこまでは至ることができませんでした。今回、詳細に書かれた資料を公開していただけているので、これを元に勉強をして理解を深めたいと思いました。
講演者、スタッフ、参加者の皆様、ありがとうございました!