03/12(火) は「雑談を生み出すソーシャル・リーディングサービスVein」に参加してきました。
会場は rakumo さんの セミナールーム。
目次
暗黙知シェアサービス Vein とは
株式会社Next Intさんが開発・提供する、共感的かつオフラインの会話を支援する目的で作られた、新しいサービスです。
開発の経緯は、こちらで読むことができます。
この勉強会について
“いまグループウェアを考える” 研究会というイベントを、会場提供もしている rakumo株式会社 さんが主催していて、今回はその一回目のようです。 今後も定期的に開催していく予定ということなので、グループウェアについて改めて考えてみたいという人にはうってつけの勉強会ですね!
何故参加したか
グループウェアに元々興味があったのと、Vein について興味があったことで参加しました。 ソーシャルブックマークのようであり、情報共有のツールであるというのを聞いても今ひとつピンとこなかったので、直接どんなものなのか話を聞いてみたかった、というのもあります。
内容
心理的安全性の話と、Veinの設計
株式会社NextInt 中山心太(@tokoroten) さん
www.slideshare.net
今日の話の概要
最近考えていること
- 心理的安全性の話
- Slackの話
- Veinの話
プロジェクトアリストテレス
- 大本はGoogleの調査、Project Aristotle
生産性には次の5つが上から順位必要
- 心理的安全性(Psychological Safety) - 相互信頼性(Dependability) - 構造と明確さ(Structure & Clarity) - 仕事の意味(Meaning) - 影響(Impact) |
心理的安全性は最も需要
真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも 「チームがどのように協力しているか」であること
心理的安全性の計測
チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
- チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
- チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
- チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
- チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
- チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
心理的安全性はなにによって脅かされるか?
このように見られたくない | 簡単な解決方法 |
---|---|
無知(IGNORANT) | 質問をしない(DON'T ASK QUESTIONS) |
無能(INCOMPETENT) | 弱みや失敗を認めない(DON'T ADMIT WEAKNESS OR MISTAKE) |
邪魔(INTRUSIVE) | アイデアを提案しない(DON'T OFFER IDEAS) |
否定的(NEGATIVE) | 現状について論評しない(DON'T CRITIQUE THE STATUS QUO) |
心理的安全性を個人が促進するには?
- 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える。
- 自分が間違うということを認める。
- 好奇心を形にし、積極的に質問する。
生産性の低いチームからの生まれ変わり
- Matt Sakaguchiの事例
- 元SWAT
- 現Google SREチームマネージャー
- 社内ではとても優秀な人物だとみられていたが、 チームを組むとメンバーが委縮してしまい、空気が悪くなってしまう
Project Aristotleで低評価のチームと評価されてしまう
Sakaguchiはチームに自身の事柄を打ち明けるように依頼
- Sakaguchiは自分がステージ4の腎臓癌であることを告白
- チームメンバーは自身の健康問題について告白
- これをきっかけにチームのコミュニケーションが大幅改善
- 日常の小さな問題について話せるようになっていった
- What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team - The New York Times
- What Sets Effective Teams Apart? | Tory Burch Foundation
リーダーはなにを行ったのか?
↓
↓
- 仕事と人生は不可分
ここからはところてんさんの考える心理的安全性の話
心理的安全性は難しい
- 心理的安全性=「こいつならコレを話してもOK」
- 個人間の心理的安全性は極めて小さい
- 「自分の公開情報」と「相手の公開情報」の積集合
- 職場の心理的安全性はさらに難しい
- 「自分の公開情報」と「相手の公開情報」と「業務範囲」の積集合
- 個人間の心理的安全性を広めて、そこから職場の心理的安全性を広げる
ベン図で考える
- 積集合になるから
余談:宝くじはなぜ売れるか?
なぜ宝くじを買うかって考えると、じつは宝くじは最強の共通の話題だからですよ。買っている人の間では。
— ところてん (@tokoroten) 2018年1月15日
宝くじは夢を買っている、と言われますが、実際は「夢を共有する機会を通じたコミュニケーション機会」
宝くじをバカにするやつは、共通の話題というモノの価値を理解していないわけですね。
- 雑談の種を売っている
- 最強の共通の話題
会社の成長と、心理的安全性
- 心理的安全性と組織
- 自分の興味、相手の興味、会社の業務範囲を把握している状態
- 興味があるではダメで、興味は把握されていなければならい
- 会社の業務範囲が社内全体に周知されていること
- 技術/業務に興味がない・理解できない上司が居ると即死
- 上の人の態度はマジ大事
- 会社が成長するとは、会社の業務範囲が拡大すること
- 個人が持つ興味・知識によって会社が育成される
- 心理的安全性を形成しなければ会社の成長は限定的になる
- 雑談により、会社の業務範囲の隣接領域が広がる
個人の興味が会社に転移して成長する
→ 個人の興味関心を提示できない限り会社は成長しない
雑談で急成長する会社
ホウレンソウからザッソウへ
- ホワイトカラーは再現性の低い仕事が増えている
- 雑談により心理的安全性を上げる
- 相談と雑談はどこまでいってもグレー
属人化かつ成長できない会社
雑談を許さないで、業務範囲縮小する会社
- 会社の話ができなくなる
技術の想像と設計
- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/11/08
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余談:組織はなぜ老化するのか
- 初期
- 組織化が不十分で双方の組織が自分の業務範囲を逸脱して力バー
- 中期
- 業務範囲の逸脱による力バーは組織の軋轢を生む
- 軋轢を解消し。効率を上げるために、業務分掌が明確化される
- 老化
- 業務分掌に従って行動し、そこから少しでも逸脱したものについては、 どの組織も拾わなくなる
日本企業の伝統的解決法:飲み会
飲み会の機能
- 会社の業務範囲という問題をいったん脇に置く
- 酒の席による心理的安全性の緩和
- 個人の興味 関心を引き出し、公開情報にしていく
- 個人間の心理的安全性を見つける
- 同じ趣味、同じ興味を見つける
- 心理的安全性の領域を雑談を通じて拡大していく
- ある程度拡大したら仕事の話に戻る
- 仕事の話に戻って、じゃぁお前はなにができるんだ?
タバコ部屋について
コンピューターによるオフィスの変化
ありとあらゆる産業がコンピューターに依存
一般のオフィスへの浸透は2000年くらいから
- 1988年(美味しんぼ)
- 会社の机の上にはコンピューターはない
- 1989年(パトレイバー)
- コンピューターは電算室
- 2105年(SHIROBAKO)
- アニメの制作デスクはPCで仕事をする
- 2016年(シン・ゴジラ)
- 官僚でさえもPC
- 2018年(アグレッシブ・烈子)
- 経理は全員PC
オジサンたちの勘違い
従来型の企業
- 酒、タバコに頼らないと心理的安全性が確保できない
- 仕事がPCの中に入っていった結果、公開情報が減る
- Slackでそれがうまくできるのか?
一緒に働けば暗黙知が共有されるというのは幻想なのでは?
Slackで雑談できるか?
- #random の運用次第
- 場所によっては #/dev/null を作っていたりする
- 仕事をする場であるという認識があるとアウト
- Slackはプライベートを晒していい馬という周知が必要
- 運用がうまくても個人の問題は解決が難しい
- 誰もがプログラマと同等の言語能力を持っているわけではない
- お疲れ様ですDMやめろ問題
- パブリックコミュニケーションは怖い問題
- コミュニケーションは利害調整だと考える人
誰もが日本語を使えるわけではない
「国際成人力調査」の結果概要
- 日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。
- 日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。
- パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
- 65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。
https://bunshun.jp/articles/-/10714
NTTの時も発言者は30%だった
NTT研究所におけるYammerの取り組みと、社内Twitterの統計解析
お疲れ様ですDMやめろ問題
お疲れ様ですDMはなぜ起こるのか
- パブリックチャンネルを経由して声掛けするのが怖い
- 人に見られて評価されるのは怖い
- 長文を書くことが能力的に難しい
- 誰がなにを知っていてなにを知らないのかを想定し、パブリックチャンネルに投稿しても大丈夫な文章を作るのは超絶高難易度
- 人と話をしながら相手を探ることで文章を順次組み立てるのが普通
- これが普通の人の会話によるコミュニケーション
- 長文書けるエンジニアは世間一般からするとだいぶ異常者
なぜDMやPrivate Channelで会話するのか
このように見られたくない | 簡単な解決方法 |
---|---|
無知(IGNORANT) | 質問をしない(DON'T ASK QUESTIONS) |
無能(INCOMPETENT) | 弱みや失敗を認めない(DON'T ADMIT WEAKNESS OR MISTAKE) |
邪魔(INTRUSIVE) | アイデアを提案しない(DON'T OFFER IDEAS) |
否定的(NEGATIVE) | 現状について論評しない(DON'T CRITIQUE THE STATUS QUO) |
- パブリックチャンネルは怖い
- 心理的安全性の欠如
- ROMがいるので情報の非対称性ができる
- 公に長文を書く能力的な問題
コミュニケーションは利害調整という人
「コミュニケーション=問題解決」という人々と
— ところてん (@tokoroten) 2017年10月5日
「コミュニケーション=ポリティカルパワー、利害調整、人心掌握、コントロール」という人々がいる。
後者の人々が、社内ツールの導入の意思決定をするので、社内SNSとかの訳が分からんものが導入されて過疎る。そこにSlackとかがゲリラ戦を
あとあれだ
— ところてん (@tokoroten) 2017年10月6日
「コミュニケーション=ポリティカルパワー、利害調整、人心掌握、コントロール」な人々は、コミュニケーション相手毎に別のことを言っていいと考えている。
ゴールが問題解決じゃなくて、利害調整だから。
だから、オープンな環境では、彼らは発言することができなくなる。
サイコパス vs Slack
Slack、DM禁止することはできないけど禁止したいって言ってる知り合いの会社が最近多くて、理由はサイコパスとか社内政治に全振りしてるような人に有利すぎるかららしい。https://t.co/43Et8yaegF
— takano (@iototaku) 2018年11月12日
コミュニケーション=説得だと思っている人は、相手に合わせて伝える内容を変えていい、と思ってるから、DMで社内政治を全力でやられると、ファクトが雲の彼方にきえるのよなぁ。
— ところてん (@tokoroten) 2018年11月13日
コミュニケーション=ファクトの共有、認識すり合わせという人は、公開チャンネルに書き込むhttps://t.co/0H1C4SO8mF
世代間格差によるTPO認識の違い
NTT研究所におけるYammerの取り組みと、社内Twitterの統計解析
とはいえ
しかしまぁ、ファクトに他意を見出す人が現れ始めると、DMに避難せざるをえなくなる。
— ところてん (@tokoroten) 2018年11月13日
ファクトのやり取りに勝手にストレス溜めて爆発されたら、君からは情報を隠さざるを得なくなるよ。
パブリックチャンネルは健全性の指標
SmartHR社の事例。ここまでできるまでには相当努力をされたのではないか。
ひさしぶりに SmartHR 社の Slack のオープン具合を調べたんですが、人が増えてるのにむしろオープンになっていってる傾向なのすごくないですか?? pic.twitter.com/4ZQ1LTgUN3
— 宮田 昇始 (@miyasho88) 2019年2月6日
余談:言霊信仰とスタンプ
- 日本語は主語が省略される言語
- 「(私が)ツライ」は「(会社が)ツライ」
- 自分の感情の発露は空気が悪くなる≒言霊
- スクラム開発のニコニコカレンダーの解決
- 言外の取られ方をする
- テキストは行間が読まれる
- 我々は行間を読む訓練を散々している
- 「どうしてこんなことをしたの?」
- 「今日の調子はどう?」
- Lineのスタンプはスタンプ通りに受け取る
- 感情を感情として伝える
- 主語補完がされづらい、言霊になりにくい
マーケットのインターネットの変化
情報発信手段の変化トレンド
情報発信のハードル低下
コンシューマーマーケットは非言語化
- non- text internetが消費者コミュニケー シ ョンの主流になった
会社はnon- text-Internetになっているか?
Veinのコンセプト
- non-text internet for work
- 情報発信にテキストを不要にすることで、情報発信可能者を増やす
- 会社における仕事ではない場所を作る =Vein (静脈)
- 雑談の種=暗黙知を共有するキッカケ
- 自分のことを話してもよい場所
Veinのマーケット戦略
マーケットが空白だと思って作っている
野中郁次郎のSECIモデルと、各種ツールの関係性を考えると大よそこうなる。
— ところてん (@tokoroten) 2017年10月6日
プログラマーであれば、左上はペアプロを置くことが可能だが、そうじゃない職種では、左上は何になるのだ?
非プログラマでは、共同化の作法が出来ていないので、ツールとして空白地帯の可能性が高い。 pic.twitter.com/ftYmymPufj
Veinの細かい設計思想いろいろ
- 長文コメントを書きづらくする
- 共犯者の仕組み
- 閲覧記録の削除機能は無い(記事そのものを削除する機能はある)
- マルチコミュニティブースト
- マルチコミュニティの人が評価される仕組みを作りたい
- マルチポスト把握というのは昔の考え方
ロードマップ
- グループ共有RSSフィードのリリース
- PRは出来上がっていて、機能調整してデバッグするだけ
- iPhone版の開発
- 友人の会社に発注中
- 記事検索機能、タグ検索機能
- 開発中
- ユーザー管理
- 開発中
- SSO
- 金を積まれたら作る
手伝ってくれる人を募集中
小さいインターネットが無数にあるのが今のインターネット
- 小さいインターネット同士をつなげるための仕組み
- Slackだとチャンネル増えすぎて困る
- ChatWorkはアカウントがメールアドレスなのでシングルユーザーしか使えない
懇親会
ここに書けないような事を喋っていた気がするので、全部酒のせいということで割愛(笑)
まとめ
通常の勉強会だと、会場提供の会社から会社説明などが有ると思うのですが、今回はありませんでした。 あの内容と、きれいな会場を提供いただいているのに、なんか申し訳ない気持ちなのでここにリンクを張っておきます。
Twitterのハッシュタグもなかったのでつぶやきも無いのですが、代わりにブログで内容を紹介する形にさせていただきます。 文章表現等でおかしなところや拙い表現があった場合はたぶん私のしくじりなので、 講演者のところてんさんや会場提供のrakumoさんには問い合わせ等はしないよう、お願いします。
がっつり内容を起こしてみましたが、とてもいい話を聞くことができたなと思っています。 日頃断片的に思っていたことを、こういう形で整理して話をしてもらえるのは本当に有り難いことです。 一方的に話を聞くのではなく、会場からも質問が飛んで掛け合いのようになっていて参加者もアツかったです。 参加できてよかったです! 初回からこの感じだと、次回以降も期待が高まります。
勉強会から帰って、早速Veinを使ってみました。
実際使ってみて結構感心したので、夜中なのにツイートしたら結構反応をしていただけたようです。
結構スライド見て「これ良いな」と思っても、はてブにブクマするのをよく忘れるので、取り敢えず踏むだけでバンバン登録できるだけでも有り難い。RSSリーダーにせよはてブにせよ、自分で明示的に登録しないといけないので、取り敢えず見たものが溜まっていくのは、個人的にはいい感じ。
— kabukawa (@kabukawa) 2019年3月12日
みんな興味はあるんだけど使うまでには、という感じなんですかね。 取り敢えず現在は無料で使えるので、使ってみることをオススメします。 個人的には、これは楽だし面白いな、と思いました。
最後に、講演者、スタッフ、参加者の皆様、ありがとうございました!