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日々のアウトプット記録

実践者が語るリアルなマルチクラウド ~AWS、Azure、GCP、Oracle Cloud~

02/01(金) は「実践者が語るリアルなマルチクラウド ~AWS、Azure、GCPOracle Cloud~」に参加してきました。

oracleinnovation.connpass.com

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会場は 日本オラクル株式会社 さんのカフェスペース。そう、OchaCafeも開かれているあのきれいなところです!

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場所が外苑前駅から直結ということで、建設中の新国立競技場も見えたり。

こういう場所で働けるって良いですねぇ。


目次


Oracle Innovation とは

今回の勉強会は Oracle Innovation というグループが開催されています。

oracleinnovation.connpass.com

Oracleというと、エンタープライズ向けのカッチリした企業というイメージですが、

  • 自社製品にこだわらない(何ならメインアジェンダOracleと全く関係がないときもある)
  • でもちょっとだけOracle Cloudが顔を出すこともある(ご愛嬌)
  • ビジネスとテクニカルの間くらい(テクニカルは入門編くらい)
  • 参加者と一緒に作る(全員が登壇候補者!)

ということを掲げていて、かなりオープンな(オープンすぎるくらい?)形で運営されているようです。

Oracleさんではこの Oracle Innovation の他にもビジネス/開発者向けに勉強会を開かれています。

1つ目はOracle Cloud Hangout Cafe。

ochacafe.connpass.com

1回目に参加したときの参加報告はこちらですので、気になる方は併せてどうぞ。

kabukawa.hatenablog.jp

次回は3月7日開催予定だそうです。テーマはMicroservicesなJavaアプリケーションとのことなので、気になる方は参加しましょう!

2つ目は Oracle Code Tokyo Night。

oracle-code-tokyo-dev.connpass.com

こちらはまだ参加したことはないのですが、こちらも面白そうなテーマで開催されているようですね。

勝手なイメージだと

甘口 中辛 辛口
Oracle Innovation Oracle Code Tokyo Night Oracle Cloud Hangout Cafe

こんな感じになるのかな(何の参考にもならない情報)


何故参加したか

パブリッククラウドはシェアから言えば相変わらずAWSが圧倒的なことは変わりないと思います。 一方で、その他のクラウドベンダーも様々な特徴を持っていて、それはきちんと知っておく必要があるとも思っています。 何でもかんでも取り敢えずAWS、ではなく要件に応じて使い分けたりするのもこれからは大事になってくる。 そういう意味でマルチクラウドについて当のクラウドベンダーがどう考えて取り組んでいるのかを知るのはとてもいいことだと思い、参加しました。


タイムテーブル

時間 内容 スピーカー
17:00~17:30 会場・受付 ドリンクをとって好きな席にお座りください
17:30~17:40 オープニング 司会より
17:40~17:55 A8.netにおけるクラウド遍歴から得たマルチクラウド運用 株式会社ファンコミュニケーションズ
17:55~18:30 オンプレHadoopからAWSGCPを利用したマルチクラウドへの道のり 株式会社リクルートライフスタイル様
18:30~18:55 実際にAWSとAutonomousを接続してみた話 株式会社ビヨンド様
18:55~19:15 Oracle Cloud × MS Azure クラウドだって "みんなちがってみんないい" 株式会社オープンストリーム様
19:15~19:45 懇親会 -
19:45~20:00 完全撤収 -

内容

マルチクラウドについてのセッションですが、実際にガッツリマルチクラウドを使った事例の話もあればやってみた系のものもあって、ビジネス側の人でも割と参加しやすい雰囲気だと思います。

当日のツイートは既にトゥギャられています(仕事早っ!)ので、こちらもどうぞ。

togetter.com

最初は乾杯から(笑)

どうでしょう。この雰囲気で勉強会。参加したくなってきたでしょ?(笑)


A8.netにおけるクラウド遍歴から得たマルチクラウド運用

株式会社ファンコミュニケーションズ 鈴木誠司 さん

[資料は公開されたら追記します]

成果報酬型広告サービスの A8.net をオンプレとマルチクラウドで運用している、という内容。

  • オンプレとクラウドの割合は1:9
  • クラウドは現在はAWSを利用
  • 月400万円くらいのコスト
  • 成果報酬型広告は広告の値段が変わるので1円のものもあれば1万円のものもある
  • サーバーが落ちると大きな損失になるので、24h/365dの安定運用が必要
  • これまで利用してきたクラウドは、ニフクラ、IIJ GIO、IDCF、AWSGCP、TresureDataなど
  • 拠点冗長のためにトラフィックを仮想ルーター
  • DNSDNSラウンドロビン→GSLB(Global Server Load Balancing)→Route53(AWSDNSサービス)
  • クラウド事業者から提供された仮想ルーターが死ぬ問題発生
    • 広告の配信ではHTTPセッションの3way ハンドシェークが必ず帰ってくるとは限らない
    • セッションのメモリを食いつぶして仮想ルータが落ちる
    • 別の仮想ルータに変更して解消
  • データベースはAWSのRDSでOracleを使用
  • RDSのDisk I/O上限張り付き問題発生
    • gp2(汎用SSD)でのIOPS上限(DBインスタンスタイプの制限で一定以上は上がらない問題)
    • io1(プロビジョンドSSD)ではIOPSは上げられるがコストが上がる
    • インスタンスタイプを上げるには停止が必要(継続稼働できないのでNG)
    • io1に変更して利用中だが、コストが気になる
    • Oracle ATP(Autonomous Transaction Processing) も検証予定
  • マルチクラウドにした経緯は、設計したと言うよりはこれまでのシステム拡張の経緯で。
  • 広告配信はオンプレでは行わずすべてクラウド上で

個人的な感想

  • RDSのディスク周りはio1にしておけばハマらずに済みそうだけど、コストはやっぱり気にあるよなぁ、という印象。
  • Oracle ATP(Autonomous Transaction Processing)は別のセッションでも話が出てくるけど、コスト的にはどうなのか気になるところ。


オンプレHadoopからAWSGCPを利用したマルチクラウドへの道のり

株式会社リクルートライフスタイル 山田雄さん

speakerdeck.com

分析基盤をオンプレからマルチクラウド環境へ移行してわかった、マルチクラウドの辛さ、そして楽しさという内容。

マルチクラウドってイケてる?

  • そんなことはない。辛いことはたくさんある。
  • マルチにしなくて良いならしないほうが良い。
  • でも、マルチクラウドを常に選択肢には入れたほうが良い。

リクルートライフスタイル社の分析基盤の変遷

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  • オンプレのHadoopからAWS, GCPのマルチクラウド環境への移行。
  • 一気に移行したわけではなく、都度問題/課題を改善していくうちに現在の形に。
  • それぞれのフェーズで辛いことが発生し、その都度改善を行ってきた。

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マルチクラウドのメリット・デメリット

  • AWSの見解
    • 複数のシステムを学習してその違いを理解する必要
    • ボリュームディスカウントを受けるには1つに絞ったほうが良い
    • AWSが一番サービスが揃っている
  • Googleの見解
    • ハイブリッド、マルチクラウドを戦略の一つに
    • オープン戦略

デメリット

  • クラウド間のデータ転送が必要
  • 両方の新サービスを追えない
  • 単一よりお金がかかる場合も
  • 運用コストがかかる

メリット

  • 楽しい(技術的制約がない)
  • 色んな国に行ける
  • 人脈が広がる

結論

マルチクラウドって辛いこともあるけど楽しい


個人的な感想

マルチクラウドAWS以外はどこも割とそういう事を言っている気がする。

自前でこうやって構築できる会社は、凄いし良いなと思います。

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一方でSIerが割と多い日本では、マルチクラウドのほうが本来はSIerにとっては "Syetem Integration" 技術の見せ所のはずだけど、どうなんですかね。SIerが頑張っているって話はあんまり聞かないなぁ。何処かのクラウド事業者のサービスを組み合わせてSIでございってお茶を濁しているところのほうが圧倒的に多そうなイメージ。このあたりが変わらないとマルチクラウドは日本ではあまり進まなそうな気もする。


Oracle Cloud × MS Azure クラウドだって "みんなちがってみんないい"

株式会社オープンストリーム 石田真彩 さん

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20190203_OracleCloud-MSAzure - Google スライド

たくさんクラウドはあるけど、何処かが一番とかそういうことではなく

みんなちがって、みんないい。
その時の自分に(会社に) あうクラウドを見つけて利用しよう。

ということなので、きちんといいところを見つけてうまく利用しましょう、という内容。

Oracle Cloudのいいとこ

  • コスパの良いサービスが多い
    • 大きいインスタンスのサービスが多いので個人ではとっつきにくい
  • Javaのサービスとの親和性が高い

(Microsoft Azureと比べて) Data I/O 無料枠が多い

Microsoft Azureのいいとこ

  • ADを使った認証基盤との簡単連携
  • Windows/C#フレンドリー
    • Java/Pythonとかでやるとハマることがある
  • GUIが(比較的)使いやすい
  • コード書けない人でも使えるサービスがある

(Oracle Cloudと比べて) 分析系サービスが豊富 というか色々サービス豊富

いいとこどりで考えてみた(事例ではなく脳内で考えたもの)

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でも、当然いいことだけじゃなく

とか色々大変なこともある。

でも、向いてないサービスを使うよりは向いているサービスを組み合わせて使うほうが良いことも有るわけで。

1ベンダーにまとめるべきか複数ベンダーを 使用するかその時々に柔軟に検討しよう


個人的な感想

最後のツイートは結構見ていただいた方が多かったようで、コメントもいくつかいただきました。 みんな仲良く大きな雲としてクラウドの世界を作れるといいのにな、と思いました。 (それこそがクラウドネイティブ、というお気持ち)


実際にAWSとAutonomousを接続してみた話

株式会社ビヨンド 寺岡佑樹 さん

speakerdeck.com

実際にAWSのEC2からOracle Cloud の Autonomous OLTP Database Cloud Service に接続してみた、という内容。

Autonomous とは?

  • Autonomous = 自律
  • 機械学習を用いた自律型データベース
  • SLA = 99.995%(計画停止含む)
  • 1か月間のダウンタイムが2.5分未満

特徴

  • 自動管理(Self-Managing)
  • 自動保護(Self-Securing)
  • 自動修復(Self-Repairing)

なぜ Autonomous Database が必要か?

  • Database is Not working
    • アクセス過多
    • サーバリソース不足
    • 物理的/論理的なサーバそのもののトラブル
    • 未知の事象
    • 動いていて当たり前なのに落ちるときはあっけなく落ちる

Autonomous Database を使うと?

  • 運用自動化だけでなくチューニングも自動
  • CPU/ストレージ別々に稼働中に即時拡張/縮退
  • ダウンタイムなしでパッチ適用
  • 障害からの自動回復
  • 圧倒的精神疲労から解放

Autonomous Database の使い方

資料を見てください。(ここに書くより見てもらったほうが分かりやすい)

このあたりの手順が資料の方に書かれています。

AWSのEC2からの接続は以下のページに書かれています。

docs.oracle.com

特にAWS EC2に限ったものではないので、他のクラウドやオンプレなどからの接続も環境さえ作れればこの方法で接続可能なようです。 こういうドキュメントをきちんと用意しているのは良いですね。

資料の方には簡単なサンプルコードも載っていますので、環境があれば試してみることは可能ですね。 (DBとして接続してクエリを投げるというものなので、Autonomous Database としての機能を試せるわけではありませんが)


個人的な感想


懇親会

病み上がりだったので、懇親会は早々に退散しました。 でも、他の参加者の皆さんは登壇者やOracleの社員の方に熱心に質問などをされていて、結構アツかったです。


まとめ

帰り際に、会場の入口にこんな事が書いてあるのに気が付きました。

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あなたのクラウドを超えて。
>commit;

OracleというのはデータベースとJavaの会社というイメージだったのですが、クラウドの会社でもあるんだな、というのを改めて認識しました。 こういうイベントをはじめとして、これまでのイメージを払拭していく活動はDevRel活動の一環なんだと思いますが、

  • ちゃんと開発者と向き合おう
  • コミュニティを大事にしよう
  • 楽しくやろう

というところは大事だし、そこをこういう形で進めていけるのは凄いことです。
IBMの時も思ったのですが、ちゃんと時代に応じて変わっていける会社は強いなぁと思いました。

とても楽しく、いろいろな話が聞けて刺激を受けることができ、参加できてよかったです!
講演者、スタッフ、参加者の皆様、ありがとうございました!